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トラブルを避ける「遺産相続」について

「遺産相続」と聞いて、みなさんは何を思い起こしますか?「両親ともに元気だから、まだ考えるのは早いかな」「うちは兄弟姉妹の仲が良いから揉める心配はないわ」「お金持ちの家庭の問題。関係ないでしょ」……このうちの1つでも思い浮かべたあなた。危険です! 50代ともなれば、いつ遺産相続が発生するかわからず、資産が少ないほうが揉めるというデータもあります。決して他人事ではない「遺産相続」問題。ここで基礎から学んでいきましょう。

そもそも「遺産」って? どうやって引き継ぐの?

家族が亡くなると、悲しみにくれる間もなく、お通夜や告別式の手配、死亡届の提出など、さまざまな雑事が襲ってきます。そんななか、同時に始まるのが遺産相続です。「遺産」とは、亡くなった人(「被相続人」という)が持っていた一切のものを包括的に指す言葉ですが、財産として主にフォーカスされるのは、預貯金、土地・家屋などの不動産、株や書画骨董などです。これらはもらって嬉しいプラスの遺産といえますが、一方で借金やクレジットカードの残債など、マイナスの遺産があることも忘れてはなりません。

そのため相続人には相続をするかしないかを選ぶ権利があり、その選択肢には「単純承認」「相続放棄」「限定承認」という3つの方法があります。

「単純承認」は、被相続人が残した、すべての財産の権利と義務を引き継ぐこと。これに対して、一切の権利や義務を放棄するのが「相続放棄」です。例えば、もらえるものより明らかに借金が多いという場合には、権利も義務も放棄して、遺産相続に関わらないということも可能なわけです。
また、相続によって得た財産で借金などを返済し、残った財産がある場合だけ受け継ぐという「限定承認」もあります。プラスがあった場合だけ相続するという一見おいしい制度に思えますが、これには相続人全員の合意が必要なため、実際はあまり利用されていないようです。
こうした意思表示は、原則、相続の開始を知ったときから3か月以内に選択する必要があります。

そもそも「遺産」って? どうやって引き継ぐの?

トラブルを避けるためにも、「遺言」の作成を

遺産分割で最も優先されるのは、亡くなった人の遺志(遺言)です。遺言がない場合は、法律が定めた割合に従って分割します。

さて、相続についてどのような準備が必要かを整理すると、以下の3つになります。

  1. ① 遺産をどう分けるか
  2. ② 相続税はかかるのか。節税対策は?
  3. ③ 相続税がかかる場合、納税資金はどうするか?

このうち、資産の多寡にかかわらずトラブルになりやすいのが、「誰がどの遺産をどれくらい受け継ぐか」ということです。
これには、「遺言」によって指定する方法と、民法によって定められた割合で分割する「法定相続」があります。
トラブルを避けるためには、その財産を築いてきた本人が遺産をどのように分配・処分するかを決める「遺言」が有効です。「長男に家を残すから、次男には現金を残したい」「未婚の子どもには、多めに遺産を譲りたい」など、家庭により事情はさまざま。それぞれにあった遺産相続のためには、遺言で意思表示をしておくことがベストなのです。

遺言には、おもに「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」があります。「公正証書遺言」は、立会人を立て、公証人(*)が文章にまとめて登記を行うものです。一方、「自筆証書遺言」は、本人が書いた自筆(手書き)による遺書のこと。気軽に作れて良さそうに思えますが、実は書式の不備により無効となる場合も多く、また「本人が書いた」という証明が難しいため、トラブルが起こりやすい傾向がありました。

* 私的な法律紛争を未然に防ぐため、一定の事がらや法律を証明・認証する人。
(裁判官、検察官、弁護士あるいは法務局長や司法書士など)長年法律関係の仕事をしていた人の中から法務大臣が任命する。

そこで、「自筆証書遺言」をより利用しやすくし、かつ、相続をめぐる紛争を軽減させるため、2019年1月に自筆証書遺言の方式を緩和したうえで、さらに法務局で保管してくれる制度が創設され、2020年7月から施行されることになりました。従来、遺言書はすべて手書きであることが条件でしたが、財産目録については、パソコンで作成した目録や通帳のコピーなど、自書によらない書面も認められるようになったのです。
遺言作成のハードルが下がった今、一定の年齢になったら遺言を用意しておくのがお勧めです。ご両親にも元気なうちに勧めておきましょう。

さて、遺言があれば、遺産はそれに従って分割されるのが原則です(一定の法定相続人には最低限の取得分である「遺留分」が認められています)が、ない場合は法定相続分が適用されます。

下図「相続人の範囲と法定相続分」をご覧下さい。

図)相続人の範囲と法定相続分
図)相続人の範囲と法定相続分

配偶者がいる場合は、配偶者が「相続人」となります。以下、図のように夫が死亡し、妻が相続人となった場合を想定して説明します。

【ケース1】のように、子どもがいる場合は、妻が遺産の1/2を受け取り、子どもの数で残りの遺産を割って分配します。
また、子どもがいない場合で、かつ夫の両親が健在の場合は【ケース2】のように、妻が遺産の2/3を受け取り、残りは被相続人の親に分配されます。意外と盲点なのが【ケース3】。子ども、被相続人の親がともに不在の場合、被相続人の兄弟姉妹に遺産が渡ります。万一の際、配偶者にすべての財産を遺したければ、遺言は不可欠です。

なお、2019年7月より、「民法の相続に関する規定」(相続法)が改正され、介護などで特別な貢献をした場合、相続人以外の親族が「寄与分」を請求できるようになりました。例えば、同居していた義父の介護をいくらがんばっても、遺言がないかぎり息子の妻(嫁)には相続の権利はありませんでした。でもこの改正により、嫁側からも遺産の請求ができるようになりました。
超高齢社会である現代、介護している人が報われるように時代も変化しているのですね。

終活するなら、エンディングノートよりもまず遺言!

終活ブームの昨今。自身の人生について綴るエンディングノートを作るのもよいですが、トラブルになった際には、エンディングノートは法的な強制力はありません。遺産相続がきっかけで、愛する子どもたちに、トラブルが起きたら悲しいですよね。「争続」を避けるためには何より遺言が重要になることを、配偶者にはもちろん、親世代にも伝えておきましょう。

次回 は気になる相続税について、より踏み込んだ内容をお届けします。

和泉昭子(いずみ・あきこ)

和泉昭子(いずみ・あきこ)

株式会社プラチナ・コンシェルジュ会長/生活経済ジャーナリスト/ファイナンシャル・プランナー/人財開発コンサルタント。

出版社・放送局を経て、フリーのキャスターに。 NHKを中心に、ニュース・情報番組を担当。1995年CFP ®(ファイナンシャル・プランナー上級資格)を取得して現職。現在はメディア出演や講演活動、個人相談などを通じて、マネー、キャリア、コミュニケーションに関する情報を発信している。

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