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特集:夏の汗のニオイ対策

夏こそ気になる汗のニオイ、正しい対策で不安を解消!

2018/6/16

気温の上昇とともに汗の量が増える夏は、ベタつきやニオイに悩まされる人が少なくありません。市販のデオドラント剤などで対策することはもちろん有効ですが、サラサラしてニオわない汗をかける体質に改善することも重要です。汗やニオイに悩む多くの患者さんの診療を行う五味クリニックの五味常明院長に、汗のメカニズムから効果的な対策まで教えてもらいました。

熱から脳を守るのが
汗の最大の役割

暑くなると汗をかくのは、実は脳のためだということをご存じですか? 脳細胞はコンピューターと同じように熱に弱いもの。私たちの体温は一年を通して36~37度前後に保たれていますが、この温度こそが脳の正常な働きを維持することができる適温なのです。

そこで外気などの暑さを感知すると、脳の視床下部から「汗をかけ」という指令が出されます。その指令は交感神経を通じて、全身のほとんどの部分に分布する汗腺(エクリン腺)に伝わります。

汗腺は皮膚血管の血液から血漿けっしょう(血液から赤血球などを除いた液体成分)をくみ取り、汗として排出します。皮膚の表面に出た汗は自然に蒸発し、打ち水のように気化熱を皮膚から奪って体温を下げます。

こうした汗の働きがあるからこそ、私たちは暑い夏でも体温を一定に保ち、脳を熱から守ることができています。これは脳が発達した人間だけが有する、とても優れた体の仕組みのひとつといえます。

■発汗のメカニズム

発汗のメカニズム

「良い汗」と「悪い汗」の
違いとは?

体温調節に不可欠なものだと分かっていても、「肌がベタベタするし、ニオイも気になるから、極力汗はかきたくない」という女性は多いものです。しかし、汗イコール臭いものとは限りません。「良い汗」であれば、ベタつきやニオイはほとんど生じないのです。

先に述べたように、汗腺は血漿をくみ取って汗として排出します。といってもそのすべてを汗として出すわけではなく、血漿の中に含まれるミネラルなどの体に必要な成分を血管に戻して、残った成分だけを排出するろ過機能が汗腺には備わっています。

汗腺でしっかりろ過されて、ほとんど水に近い状態になったものが「良い汗」です。
良い汗には次のような特徴があります。

  • ■血漿に含まれる成分の濃度が低いため、サラサラしていてニオわない。
  • ■アルカリ性の成分もろ過されるため、皮膚が酸性に保たれて、ニオイの原因となる雑菌の繁殖が抑えられる。
  • ■汗がごく小さな粒となって皮膚の上に散らばるため、蒸発しやすくなる。
  • ■少ない汗の量で、効率よく体温を下げることができる。

一方、ベタついたり、イヤなニオイがする「悪い汗」は、汗腺のろ過機能がうまく働かず、血漿に含まれるアンモニアや乳酸などの濃度が高くなることで生じます。悪い汗の特徴は次のとおりです。

  • ■血漿に含まれる成分の濃度が高いため、ベタベタしていて臭くなりやすい。
  • ■汗に含まれる成分に雑菌が繁殖することでさらにニオイやすくなる。
  • ■汗の粒が大きく、蒸発しにくい。
  • ■そのため大量の汗が出ていても体温調節がうまくできず、ただ流れるだけの「無駄汗」になりやすい。

汗をかかない生活が
汗腺の機能を低下させる

どうして悪い汗をかいてしまうのでしょうか。その大きな原因は、汗腺の機能の低下にあります。

人間の体にはおよそ500万個の汗腺がありますが、このうち汗を出す「能動汗腺」は日本人の平均で230万個程度で、残りの半数以上が汗を出さない「休眠汗腺」です。

能動汗腺の働きが活発であればおのずと良い汗をかくことができますが、冷房の利いた室内で長時間過ごすことが多かったり、運動不足などで汗をかく機会が少なかったりすると能動汗腺の働きが低下するため、悪い汗になりやすくなります。

また、汗には脳を守るという役目があるため、脳に近い上半身ほど汗腺の機能が高く、脳から遠い手足は汗腺の機能が衰えやすい傾向にあります。ちょっと体を動かしただけで、上半身だけどっと大量の汗をかいたりするのはこのせいです。

さらに、更年期を迎えた女性の場合は、発汗を抑制する働きをもつ女性ホルモンが減少するため、こうした局所的な大汗をかきやすくなります。この症状をホットフラッシュといいます。

入浴法と冷房の使い方が
悪い汗予防のカギ

良い汗をかくためには、汗腺を鍛えることが欠かせません。そこで、本格的な夏を迎える2週間ほど前からぜひ始めたいのが「汗腺トレーニング」です。次の方法で毎日行いましょう。

  1. (1) 42~43度のやや熱めのお湯を、浴槽の1/3~1/4くらいまで張る。
     ※皮膚が弱い人はぬるめのお湯にする。
  2. (2)ひじから下と、ひざから下だけを湯船に15分ほどつける。
    (湯船の中におけを裏返しに入れて座ると、ちょうどいい高さになる)
  3. (3) (2)の湯船に水を足して36度くらいにし、再び10~15分ほどつかる。
  4. (4)かいた汗は扇風機やうちわの風で蒸発させる。

また、これからの季節は冷房の使い方にも工夫が必要です。室内と外気の温度差が少ないほど汗腺に負担がかかりにくくなり、悪い汗の予防につながります。ポイントは次のとおりです。

  • ■冷房の設定温度を徐々に高くしていき、最終的には27度で常時過ごせるようにする。
  • ■冷房をかけるときは扇風機やサーキュレーターを併用したり、窓を5~10cmほど開けて空気を対流させる。
  • ■外出する5~10分前には冷房を切り、暑さに体を慣らす。
  • ■冷房の利いた室内に入ったらすぐにストールなどを羽織り、急激に体を冷やさないようにする。

さらに、じんわり汗をかく程度の有酸素運動を毎日15~20分程度行うのも効果的です。

抗酸化成分や食物繊維などを
多く含む食品をとろう

なお、体のニオイは汗以外の物質によっても発生します。例えば加齢臭は、皮膚に分泌された皮脂の成分が活性酸素によって酸化されることで作られる「ノネナール」という物質が原因で生じます。

加齢臭というと男性に多いイメージがあるかもしれませんが、女性も年齢とともに活性酸素を抑制する働きをもつ女性ホルモンが減少するため、皮脂が酸化しやすくなり、ニオイのもととなります。抗酸化力の高いビタミンCやビタミンEを多く含むフルーツや緑黄色野菜、イソフラボンを多く含む納豆、豆腐などの大豆製品、セサミンを含むゴマや麦、米、カテキンを含むお茶などを積極的にとって、皮脂の酸化を防ぎましょう。

また、汗腺の機能が正常であっても、血液中のアンモニアや乳酸の濃度が高ければ、汗とともに排出されて酸化した皮脂と混ざり合い、イヤなニオイのもととなります。

これを防ぐためには、下記のようなことに気をつけることが大切です。

  • ■肉など動物性たんぱく質のとり過ぎに気をつける。
  • ■食物繊維やオリゴ糖、乳酸菌を含む食品を積極的に摂取して腸内環境を整える。
  • ■疲労やストレスをため込まないようにする。

体のニオイには、今の自分の健康状態が現れるもの。毎日の食事や生活習慣を見直して、健やかな体をキープしていきましょう。

五味常明さん

五味常明

医学博士/体臭・多汗研究所所長、五味クリニック院長

1949年長野県生まれ。一橋大学商学部、昭和大学医学部卒業。昭和大学形成外科などで形成外科学、および多摩病院精神科などで精神医学を専攻。患者の心のケアを基本にしながら、外科的手法を組み合わせる「診療外科」を新しい分野として提唱し、体臭・多汗治療の現場で実践する。『新・もう汗で悩まない―「汗博士」による多汗治療の最前線』(ハート出版)、『気になる口臭・体臭・加齢臭』(旬報社)など著書多数。

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