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特集:今日から始める 防災対策

自分が自分を助ける意識を持ちましょう

2019/8/31

9月1日は防災の日。いつ来てもおかしくない災害に備え、今準備しておくべき対策には、どんなものがあるのでしょうか。気象予報士であり、日本防災士会の常任理事として防災意識の啓発活動を行っている木原実さんにお話を伺いました。

把握していますか? 自宅付近の“災害リスク”

近年、日本では地震に加え、風水害によるリスクが増えています。みなさんはハザードマップを見たことがありますか。ハザードマップは津波、洪水、土砂災害などで被害が及ぶ恐れのある区域を示したもので、市区町村のウェブサイトなどで公開されています。

2019年、行政は防災情報の伝え方を5段階に分けました。災害に対する「心構えを高める」警戒レベル1から始まり、レベル2になったら「避難行動の確認」を、レベル3になったら「避難に時間を要する人は避難」、4が発令されたら「全員避難」。そして、警戒レベル5は「すでに災害が発生している状態」です。レベル3以上は市町村が発令します。そこで大事なのは本当に今、自分が居る場所が危険にさらされているのかどうかを判断することです。

例えば集中豪雨で、自分の住む市区町村がレベル4になったとします。でも自分の家の周りはハザードマップでは、浸水や土砂崩れの恐れがほぼない地域。一方、避難所に向かう道筋には、危険エリアが広がっていたとします。すると「今は自宅に居るほうが安全なのではないか」と考えることができます。それならば「今夜ひと晩は自宅で待機しよう」と判断することができます。

最近では避難方法の一つとして“自宅避難”が注目されています。一見、矛盾する言葉に思えますが、避難所への退避ではなく、安全であれば自宅で生活を続けることをいいます。災害時の避難所には、家で過ごせない大勢の人が押しかけますので、自宅で暮らせるならそれが一番。そのケースを想定しても「備蓄」は大事です。

残念ながら、警報だけでは1軒、1軒の危険度までは判断できません。私も防災士として、日ごろから災害時の備え方や地域の防災意識向上を目指して活動していますが、安全に関する情報は待っていてもやってきません。今は、自分から情報を取りに行く時代ですので、みなさんも、今すぐハザードマップを確認してみてください。そして、自宅や職場など普段、自分や家族が居る環境の危険度について把握し、災害時どうしたらいいのか、事前に考えておくようにしましょう。

意外と簡単な“ローリングストック”

近年、懸念される南海トラフ地震のような大規模災害が起こったら、日本の物流は3日程度では回復しないでしょう。また道路が寸断するなどで陸の孤島となった場所には、いつまでたっても物資は届きません。災害発生直後は人命救助が最優先ですから、それ以外の復旧作業は命の次。自分が生き延びるために必要な準備は、自分自身でしておく必要があります。

まずは家にある食材の棚卸しをしましょう。主食となる米やそうめんなどの乾麺が、現在あるストックで何日間、家族が暮らしていけるか計算します。7日から10日分の備蓄が目安ですので、不足していたら今すぐ買い足してください。そして今後は、使ったら使った分を買い足します。これが“ローリングストック”という備蓄術です。ただ、実際には常に一定量から減らない方が安心なので「買い足してから、食べるようにする」のがお勧め。おかずになる食料備蓄としては、ふりかけやゴマ塩、佃煮などのご飯のお供に加え、缶詰やレトルト食品があれば食事のバリエーションが広がります。

水やガスの使用も限られますから、被災時には調理にも工夫が必要です。例えば、ポリ袋を活用して節水する調理法。鍋で湯を沸かし、米と飲料水または食材を入れたポリ袋をその鍋で湯煎する方法です。湯煎用の水はお風呂の残り湯などでよく、節水できます。

非常時の備えを年に一度はチェックしよう

防災用品については壊れているものはないか、電池が放電していないかなどの定期的な確認も忘れずに。防災の日などに合わせて、年に1回行えば習慣化できますね。地震対策として、家具を突っ張り棒で支えているご家庭なら、緩んでいないかの確認もこの時に合わせて行いましょう。

外出先での被災に備え、最後に詳しく紹介しますが、私は必要最低限の防災用品を携行しています。自宅に安全にたどり着くために、何が必要かを考えて準備しました。

木原さんの防災グッズの1つ、モバイルチャージャー

木原さんの防災グッズの1つ、モバイルチャージャー

人は「怖い」「危ない」と思うと避けたくなるもの。怖いことは考えたくないから、大切なことでも後回しになってしまいがち。だからこそ少しでも前向きな気持ちで備えるのが、防災対策のこつ。防災用品だったら「サバイバルツール」と呼び替えて、家族が生き延びるためにどんなものが必要なのか話し合ってみましょう。

多くの人が備えればみんなの助けに

ここで最後に、考えてみましょう。例えば、被災して避難所に来たとします。そこには着の身着のまま逃げてきた人がいます。けがをして救助を待っている人もいます。そんな状況でも、我が家の備えは完璧です。だから「夕食にしましょう」と、明かりをともし、ガスを使って食事の煮炊きを始める……。

あなたには、そんなことができますか?  さすがにできないですよね。でももし、9割の人が十分な備えをしていたら、何も持たずに逃げてきた1割の人に、みんなで少しずつ食事をシェアすることができるはず。1人でも多くの人が災害に備えておくことは、本当に大切なことなのです。

我々防災士の原則の一つに“自助”の精神があります。自分の安全は自分で守ること、これは防災の基本中の基本です。だから仮にも防災士を名乗る者が、災害時にけがをして手当てを求めるような状況になってしまったら、地域を助けるどころか、地域の負担を増やしてしまいかねません。ただ実際に災害が起きたら、「けがはしていないし、備えも十分ある。でも今は周りを助けにいく余力がどうしてもない」という防災士も、出てくることでしょう。でも人に頼らず自助さえできていれば、防災士としての役目を十分に果たしたといえます。できたらみなさんにも、防災士と同じような気持ちを持ってほしい。日ごろの備えを怠らず「誰かがやってくれるだろう」という人任せにはせず、自分から積極的に防災対策に関わってほしいのです。

防災への備えは「足りない」のが当たり前。「完璧」を目指して、面倒になるくらいなら「無いよりはあったほうがいい」という気軽な心構えも大切です。防災対策はみんなで取り組んでいきましょう。

木原さんが日々持ち歩いている“サバイバルツール”

紙面では紹介しきれなかった、木原さんが日常的に持ち歩いている防災グッズについて、詳しくご紹介していきましょう。

木原さんが日常的に持ち歩いている防災グッズ
  1. ① レインコート
    雨よけはもちろん、防寒対策としても使えます。
  2. ② 包帯(粘着式) ③ ガーゼ ④ 絆創膏
    万が一に備えて。粘着式の包帯は留め具が要らず便利です。
  3. ⑤ 充電池用ソーラーチャージャー
    乾電池タイプの充電池を、太陽や蛍光灯などの光源でチャージすることができます。スマートフォンの充電用バッテリーを電池タイプのものにすれば、このチャージャーで常に充電しておくことができ安心です。
  4. ⑥ 防煙フード
    火災対策に。煙に巻き込まれて一酸化炭素中毒になる前に、きれいな空気を入れて頭からすっぽり被って逃げます。視界も確保できます。
  5. ⑦ サバイバルシート(寝袋タイプ)
    アルミ製のサバイバルシートの寝袋タイプ。野宿の際にも活用できるし、身にまとえば防寒にもなります。
  6. ⑧ 携帯用トイレ
    エレベーターや電車などに閉じ込められてしまった場合にも。
  7. ⑨ マスク
    粉じん対策に。また避難所など、多くの人が集まる場所での感染予防に。
  8. ⑩ 携帯ラジオ
    ネットの通信環境が整わない場合でも、ラジオなら情報を得ることができます。
  9. ⑪ 10円玉
    非常時に使える公衆電話でも10円玉が必要な場合があるのでその対策に。
  10. ⑫ 軍手
    災害時には、ガラスなどが飛び散っていることも。軍手があれば安心です。
  11. ⑬ ホイッスル
    声が出なくなってしまったときにも、ホイッスルで居場所を伝えることができます。

防災用品は、小さければ用が足りず、大き過ぎても持ち歩きにくいもの。けれども災害は、いつやってくるのか予想ができません。木原さんは防災対策グッズを、その日のかばんや持ち物に合わせて少しずつ入れ替えているそう。「もっとコンパクトにしたい時は、マスク・包帯・ガーゼ代わりに使える日本手拭いを持ち歩くことも。また、火の確保は意外と難しいので、ライターがあると便利です」。女性なら生理用品などを入れておくなど、防災用品は人それぞれに違うもの。困った時に何が必要になるか、この機会に考えてみてはいかがでしょう。

木原 実(きはら・みのる)さん

木原 実(きはら・みのる)さん

防災士、気象予報士。ナレーターや声優、舞台俳優としての顔も持つ。お天気キャスターとして情報を伝えている中で、災害の解説を求められたことをきっかけに、防災の知識も身に付けるようになった。

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