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特集:和食の日

和食を手軽に楽しむコツ

2021/11/20

11月24日はイイ(11)ニホン(2)ショク(4)の語呂合わせから「和食の日」です。四季折々の新鮮な食材、多彩な調味料、一緒に楽しむお酒などが組み合わさることで、素晴らしい和食文化が作られています。今回は和食の魅力を、東京・虎ノ門で和食料理店「空花(そらはな)」と、鎌倉で「茶房 空花」の2店舗を経営する脇元かな子さんに語っていただきました。

和食は食材選びが肝心

豊かな山林を有し、四方を海に囲まれた日本は、水にもとても恵まれた国です。自然の恵みに支えられた和食は、食材を選べばシンプルな調理で十分おいしい料理が作れると私は考えています。
私は女性でも活躍ができることと、食を通じての健康に興味があったことから栄養士を目指していました。その後、さまざまなジャンルの料理を学んでいく中で、和食は「体に負担がかからずやさしい」と感じることが多かったため、和食をもっと深めたいと思い、料理人の道を選び、今に至ります。

材料

和食は「手間がかかる」と聞きますが、良い食材であれば、塩を振って焼くだけで、十分おいしい料理になります。和食の9割は、食材選びで決まるといっても過言ではありません。

一見、難しそうに思える食材選びですが、これもシンプルで「今たくさん安く売っているものを選ぶ」と意識すればかなり楽になります。旬を迎えた食材はたくさん出回り、価格が安くなっている場合が多いからです。ただし「安い」といっても、鮮度には注意しましょう。新鮮な食材であれば最低限の下処理で済み、旨みも逃げず、素材から出るだしで豊かな味が楽しめます。一方、鮮度が落ちたものは、臭みや雑みを取るために手を加えなくてなりません。食材の良し悪しは調理の手間にも影響するのです。
魚であれば血合いが黒ずんでいるものや、身の色が黄みを帯びたものは避けましょう。「この魚が旬だったな」と買いに行っても、その年により多少、取れる時期が変動します。プロであるお店の人に、お勧めを聞いて食材を選ぶのが一番です。

材料

旬を意識した食材選びを始めると、四季の移ろいにも目が向くようになります。加えて「例年よりこの食材は出荷ペースが早いな」とか「流通量が少ないせいか値段が上がっている」という実感から、地球規模の環境変動に気が付くこともあります。寒い冬には温かいものを、暑い夏には冷たいものを提供する和食は、日本の美しい四季や自然と共にあることを実感できる素晴らしい食文化です。

「出来たて」でもっと手軽においしく

私は料理人なので、自分が納得いく食材を求めていますし、それを生産される方々の苦労や想いを引き受けて日々調理をするのが仕事です。でも毎日忙しく、自分が食べるだけの食事を作ること自体が「負担」という方も多いのではないでしょうか。
そんな人には「出来たて」「作りたて」の力を借りて、調理はとにかくシンプルに済ませる方法をお勧めしたいです。

炊きたての白いご飯や、みそを溶いたばかりのおみそ汁には格別のおいしさがあります。そこに、ごはんのお供をプラスするだけで立派な「和食」が用意できます。時間が取れる日に、凝った料理を作るのもすてきですが、調理には手間をかけず「出来たてを食べること」に、こだわってみてはいかがでしょう。きっと「手軽でおいしい和食の魅力」を再発見できるはずです。

材料

今回は、時間も手間もかからない「万能だれ」と「合わせみそ」の作り方と、それを使った手軽な和食レシピを紹介します。市販の調味料を混ぜるだけで、あっという間に出来上がりますよ。日持ちする上に「食材を煮るだけ」「食材に和えるだけ」と調理も簡単。時間がある時に混ぜておくだけで、毎日の食事作りが楽になります。

安くて旬の食材を選び、作り置きのたれやみそを使って、時間も手間もかけず「作りたて」「出来たて」を食べる。これを意識して、もっと手軽に和食を楽しみましょう。

混ぜるだけで簡単!

万能だれ&合わせみそ レシピ

  • 万能だれ(写真奥)

    煮魚、肉じゃが、親子丼のベース、すき焼きの割り下に使えます。このタレに食材を入れて煮ている間にアルコール分が飛ぶので、酒とみりんを煮切る手間もありません。日持ちは冷蔵庫保存で2~3か月です。

    【材料】
    酒3に対し、みりん2.6、濃口しょうゆ1の割合で用意

    【作り方】
    空き容器に入れて混ぜるだけ。空きボトルに入れて、振ってもOK

    合わせみそ(写真手前)

    炒め物の調味料として使えるほか、茹でた野菜と混ぜお浸しにしたり、田楽みそやディップにしたり。炊き立てのご飯に乗せて、そのまま食べてもおいしいです。冷蔵庫でなら1~2か月、冷凍すれば1年くらい持ちます。

    【材料】
    みそ100gに対し、三温糖、酒、みりんを各25cc、ゴマを5g

    【作り方】
    すべての材料をフードプロセッサーまたは、すり鉢で混ぜる。
    風味は変わるが、ゴマを外して混ぜるだけでも可

万能だれで、魚を煮付ける

材料

【作り方】

  1. ① 今回はキンメを用意。熱湯をサッとかけ、ウロコと血合いを落として鍋に入れ、「万能だれ」をひたひたに注ぎ、強火にかける。

    正方形のナプキンを用意。まずは4つに折る。最後の折り目を左にしてテーブルに置く。
  2. ② 沸騰したら、吹きこぼれないよう火加減を調整し、半身1つで7分間を目安に火にかける。煮汁のあぶくが魚全体を覆う火加減で。強火にしても、魚の表面に煮汁が届かないようであれば、アルミホイルやクッキングシートで落とし蓋をする。途中、味見をして煮詰まっていたり濃く感じたりしたら、水を足して調整を。

    右上の角(1番上にある布)をつまみ、左下の角に合わせて三角に折りこむ。
  3. ③ 魚の身に万能だれを染み込ませようとすると、煮すぎて固くなるので、時間になったら鍋を火からおろす。食べる時は、トロミのついた万能だれを、ソースのようにからめて。箸休めに、茹でた青菜や木の芽を添えればより本格的に。

    上から2番目の布を、2の折り目より3センチほどあけて内側に折り込む。布の端は、2で折った布の下に入れ込む。

合わせみそで、肉と野菜を炒める

材料

【作り方】

  1. ① 油は引かず、冷たいフライパンにひき肉を入れてから火をつけ、炒めながら軽く広げる。今回は牛ひき肉を使用したが、鶏モモ、豚、合いびきなどお好みのもので。鶏ムネのひき肉を使う場合だけ、脂分が少ないので炒める時に油を少々引く。多少、固まりが残っても食感のアクセントになるので、細かく炒めようとせず、ざっくりと広げるだけでよい。

    正方形のナプキンを用意。まずは4つに折る。最後の折り目を左にしてテーブルに置く。
  2. ② 肉から油が出てきたら、その油分で小房に分けたキノコを加えて炒める。今回は舞茸を使用。キノコ類なら何でも合うが、根菜を薄切りにして加えても美味。キノコに火が通ったら、合わせみそをスプーン1杯ずつ、好みの味わいになるまで味見をしながら加えていく。

    右上の角(1番上にある布)をつまみ、左下の角に合わせて三角に折りこむ。
  3. ③ 肉にしっかり火が通ったら出来上がり。火からおろす前に、三つ葉などの葉物を加え、さっと混ぜ合わせれば、彩りも豊かになりおいしそうに見える。高さを出して山型に盛り付けるのも、おいしさアップのコツ。

    上から2番目の布を、2の折り目より3センチほどあけて内側に折り込む。布の端は、2で折った布の下に入れ込む。
脇元かな子さん

和食料理人 脇元かな子さん

元麻布や銀座の名店を経て、2016年、鎌倉に古民家を改装した「空花(そらはな)」をオープンすると、繊細な手仕事と確かな味が評判を呼び人気店に。2020年に同店を都内・虎ノ門(神谷町)に移転し、鎌倉では「茶房 空花」を新しくオープン。現在2店舗のオーナーシェフとして忙しい毎日を送っている。

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