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特集:大人のための性教育

生涯リスキリング!「包括的性知識」を身に付けよう

2023/04/20

 【30代~40代編】
自分の体のことよく知り自分でコントロール 

宋美玄先生

丸の内の森レディースクリニック 院長
産婦人科医

Q月経とPMS(月経前症候群)について教えて。

宋:女性の体は毎月妊娠の準備をしています。排卵・受精・着床のために子宮に内膜がつくられます。月経はそれらがリセットされ排出されること。妊娠したくない場合は、女性にとって月経は負担だけで健康メリットはありません。月経前には女性ホルモンが大きく変動し、PMSになる人も多く、女性の約7割が悩まされているという調査もあります。個人差はありますが、腹痛や便秘、下痢、むくみなどとともに、イライラや憂うつなど精神症状に悩まされる人も。日常生活に支障が出てしまうような人には、漢方薬で体調を整える、低用量ピルなどでホルモンバランスを調整するなどの治療があります。

Q妊娠適齢期ってあるの? 妊娠できるのは何歳くらいまで?

宋:一般的に体が成熟する20歳前後から30代前半くらいまでが妊娠に適している年齢と考えられます。40代後半や50代でも妊娠される方はいますが、かなりまれです。不妊治療をすれば…と考える方もいますね。確かに体外受精などにより効率よく妊活ができるので妊娠率自体は上がりますが、卵子の老化を治療するものではないので、妊娠可能年齢を伸ばせるわけではありません。妊娠率は30代後半から下がり方が急になります。男性の場合は40代後半になると相手を妊娠させづらくなってきます。パートナーと子供を作るのはいつの時期がいいのか、よく相談してください。

Q出生前診断ってどんなもの? 何がわかるの?

宋:妊娠中に赤ちゃんの状態を確認するために行う検査などの事です。大きく分けて妊婦健診でも使われる超音波による画像検査などと、染色体異常などを見つける遺伝子学的検査があげられます。妊婦健診では基本的に赤ちゃんの発育・大きさ、胎盤の位置、羊水の量などをチェックし、順調に発育しているかどうかを確認します。臓器の異常などが心配な場合はより精密な超音波検査を受けることもできます。遺伝子学的検査は母体の血液や羊水・絨毛を用いてダウン症などの染色体異常を調べる検査です。しかし、数多くある赤ちゃんの異常の中で、出生前検査で診断できるものは一部です。

いずれの検査においても、検査を受けるメリット・デメリット、検査の限界などがありますので、きちんと説明を受けてから検査を選択することが大事です。

Q女性特有のがんってどんなものがある?

宋:子宮体がん(子宮内膜がん)、子宮頸(けい)がん、卵巣がんなどが挙げられます。子宮体がんや卵巣がんは、月経の回数が多いほどリスクが高いため、近年増加し続けている印象です。子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって発生します。主に性交により感染するため、若年層のHPVワクチン接種によりリスクを下げることができ、接種が推奨されています。比較的検診で発見しやすいがんでもあるので、ワクチン接種の機会を逃してしまった方は自治体が実施する子宮頸がん検診を受けてください。

Qよく聞く「子宮内膜症」ってどんな病気? どんな影響があるの?

宋:子宮の内膜に似た組織が子宮以外の場所にでき、炎症やゆ着を起こしてしまう病気です。月経のたびに内膜に似た組織から出血しますので、初潮が早く、出産が回数が少なく、月経の回数の多い現代の女性に増加しています。強い月経痛や性交時や排便時などの痛みが特徴ですが、妊娠しづらくなったり、卵巣内に発生すると卵巣がんのリスクが高まるなどの悪影響も及ぼします。痛みを止める対症療法で効果がないときは、ホルモン剤や手術による治療が選択肢になります。

Qなかなか妊娠できません。どんな原因が考えられる?

宋:女性の場合、年齢以外の要因として子宮内膜症によるゆ着があって妊娠しづらくなっていることが多いですね。また子宮の中に筋腫などがあって受精卵が着床しにくくなっていたり、卵管がクラミジアなど性感染症で詰まっていたり、ホルモンの異常による排卵障害なども考えられます。ダイエットなどによる体重の変動が多い方も妊娠しづらいことが多いようです。

もちろん不妊の原因は男性側にも多く、無精子症や精子の数や運動率の低下、また精管のつまりも男性不妊の原因です。勃起不全や射精障害など性機能の問題があるケースもあります。不妊治療にはできればカップルで来院いただいて、それぞれにお話を伺いたいと思います。

Q大人として子供への性教育にどう向き合えばいいのかな。

宋:親から「生理は痛いものよ」と言われ我慢して育って、自分の娘に対しても同じように接してしまう人もいます。でも痛み止めを飲まないと我慢できないくらいの生理痛はあって当然ではありません。まず自分たちが常識と思っていた知識をブラッシュアップすること、また性に対する偏見とかタブー意識を子供の世代に押し付けない、連鎖させないようにという気持ちが非常に大事だと思います。家庭内でも性についてオープンに話せる雰囲気をつくってほしいですね。

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