生涯リスキリング！「包括的性知識」を身に付けよう

高橋：親世代が若いときに性の事を相談しようとなったら、まずは友達だったと思いますが、今の若者世代はデジタルネーティブ世代。まずはインターネットに情報を求めるのは当たり前だと思います。ただネットの情報は玉石混交。中には悪意のある情報源もあるので細心の注意が必要です。信頼性の高い専門家に相談できる窓口として、日本家族計画協会が運営する「思春期・FP相談LINE」という、LINEで相談事を送ると相談員が回答を返信してくれるものがあります。他にもネットの相談窓口はありますが、信頼できるところか確認が必要です。また身近な大人に話を聞いてもらいたいと思ったら、保健室の先生や養護教諭に相談してはどうでしょう。

高橋：セックスを誘われたとき、YESかNOか意思表示をきちんとすることは大事です。でもきちんと意思を伝えられる関係を築くのはもっと大事。それには小さいころからの経験も重要だと思います。例えば子供と親がくすぐりごっこをしているとき、「やめて」と子供が言ったときに、親はすぐにストップしてください。ノーと言ったら受け入れてもらえた経験の積み重ねが、友だちから嫌なことをされたときに「やめて」と言えることにつながり、恋愛のときの性的同意の取り方にもつながります。もう一つ大事なのは、お互いYES で始めたけど、やっぱり途中でストップもしていいからねというように、相手を思いやれる気持ちを常に持つことです。

高橋： 10代、20代に一番多いのはクラミジアです。クラミジアは自覚症状が少ないのが特徴で、男性は排尿時痛がある人もいますが、女性は特に自覚症状が少ないですね。しかし症状がないからと放置しておくと、お腹の中で炎症が続いて、不妊症につながることもあります。また最近は梅毒の感染者が急増していますので注意が必要です。他にも淋病やB型肝炎、HIV、子宮頸（けい）がんなども性感染症として挙げられます。

性感染症はコンドームの使用でリスクは下げられますが、100％ではありません。各地の保健所では匿名で無料の性感染症検査を受けることができるので、コンドームなしの性行為の経験がある、複数のパートナーができた、などリスクに思い当たる場合は検査を受けておくと安心できます。

高橋：LGBTQは女性同性愛者、男性同性愛者、両性愛者、こころの性とからだの性が一致しない人、性的指向・性自認が定まらない人、の頭文字をつなげた性の多様性の総称ですが、マイノリティー的な意味合いで使われることが多いですよね。一方、SOGI（ソジ）はセクシャル・オリエンテーション×ジェンダー・アイデンティティー、つまり男性が好き、女性が好き、どちらも好き（両性愛・全性愛）、どちらも好きではないという性的指向と、自分のことを男性と思うか、女性と思うか、性別とかは関係ないと思うかという性自認の組み合わせで、すべての人のことを言い表すことができるという考え方のことです。

男らしさ、女らしさの押し付けで息苦しく感じる人を減らそうというのがジェンダー学だと思います。大人たちが学び続けて古い価値観を落としていくことが必要なのかもしれません。

高橋：マスターベーション、オナニー、自慰などとも言いますが、少し後ろめたいイメージがありますね。でも順調に発達してきた性的欲求を自分でコントロールしているのですから、素晴らしいことです。プライベートな場所でプライベートな時間を楽しむのであれば全く問題ありません。でも注意してほしい点もあります。特に男性の場合、強すぎる刺激で気持ちよくなる習慣を身につけてしまうと、将来赤ちゃんがほしいという性行為のときに女性の体の中でうまく射精できない腟内射精障害の原因になるので気をつけてください。

またアダルト動画を利用することもあると思いますが、主に男性側のこうだったらいいなという妄想で作られているものだということを理解してください。パートナーと同様の行為をしようとしてもトラブルになることがありますよ。

高橋：月経が止まることには、妊娠の他に急激なダイエットやホルモンの異常、またアスリートのように激しい運動による栄養不足や精神的ストレスなども原因となります。まずは自分の月経周期をきちんと把握しておきましょう。そのうえで「月経が1週間以上予定より遅れている」といった時妊娠の可能性があります。セックスから3週間以上たてば検査できるので確かめてみましょう。ドラッグストアで購入できる妊娠検査薬を使い自分でチェックしてもいいですし、産婦人科を受診してもいいでしょう。

誰かに話を聞いてほしいけど産婦人科に行くのはハードルが高いと感じたら、妊娠に関する相談に乗ってくれる相談機関もあります。全国の相談機関を網羅した「妊娠SOS」をチェックしてみましょう。

高橋：セクシャル・リプロダクティブ・ヘルス／ライツの略です。日本語では「性と生殖に関する健康と権利」と訳されます。個人やカップルが、安全な性生活や、自分のセクシュアリティーを自分で決められること、また妊娠・中絶・出産に関して十分な知識が得られ、自分で「子どもを産むかどうか」などを自由に決めることができる権利とされています。家父長制の考えの根強い日本は、残念ながら女性の性的権利については後進国だなと感じます。女性がSRHRを自分の当たり前の権利として感じられるような社会にしたいですね。